パステル画の描き方は、様々な手法がありますが、始めて描く方でも直観を使い描くことで、「こんな風にしてみようかな?」と閃くことが出てきます。
やってみることでいろいろな発見ができます。自分に合う表現は、楽しみながら見つけることで確実に自分の身につき、応用が効くようになってきます。画法として学習することも大切ですが、興味が薄れてしまう人も多いと思います。
エッセンシャルアート研究所の教室、絵画教室では、表現することを大切にしてますので、画法的なことについてあまりコメントすることがありません。
ここでは、パステル画を描くにあたって、ちょっとしたコツなど今までにいただいたご質問の中からご紹介していきます。参考になさってください。
マスキングテープによる固定
ー「手の脂」対策はどのようになさっているのでしょうか。
描いているときに手の脂が知らず知らず画用紙にくっついたらしく、パステルを重ねるとシミのようになってしまいます。
ー 揃えておくと良いパステルはありますか?
ゴンドラパステル、ホルベインパステル、ヌーベルカステル、ヌーベルカステルパール、ダイソーパステルを持っています。
パステルの種類は、充分だと思います。
それぞれの特徴を生かせるよう、お友達になってくださいね。
手油対策とのことですが、
わたしの場合は、逆で指がカラカラになってハンドケアが必要になります。油分がとられてしまいます!
対策としては、紙が動かないように抑えての指油だと思いますので、
紙を固定し、あとは紙面を指で押さえないように注意すると良いと思います。
固定方法は、紙面の四隅、または周囲をドラフトテープやマスキンテープで貼ります。はがすときには、紙めくれに注意が必要なので、粘着力が弱めのものが良いようです。
新品のパステル
ー ビデオみたいにコットンでこすってみたけど色がつきません
新品のパステルをティッシュやコットンでこすっても色がつきにくいのは、パステル自体が粉々にならないよう側面を固めているからです。
この場合、使っていると段々と固い部分が薄くなってくるので、色がつきやすくなるのですが、最初は、カッターなどでパステル側面と刃を直角にして固い部分を削ることで解消できます。
また、専用のぼかし網や茶こし、おかし作りにつかう粉フルイなどにパステルをこすりつけることで、細かな粉ができるので、その粉を紙面に塗っていくことも一般的です。
網目の細かさがそれぞれに違うので、そのことを活用することもできると思います。
定着液の使用方法
ー 定着液(ホルベイン パステル画用を使用)は、どの程度吹き付ければ良い?
定着スプレーは、まんべんなくスプレーするのが大切です。
液だまりのできないようにしてくださいね。
スプレー後に更に描き進める場合、
A4紙ぐらいであれば、1秒ぐらいでしょうか。
フィニッシュで使うときは、少し念入りにスプレー、2秒ぐらいかな。
※スプレー後も色を乗せられ、描けます。定着具合で、少しなら消しゴムで消えます。慣れてきたら、色残りに対する工夫も楽しめます。色の重なりが豊かになります!
コットンの使い分けは?
コットンはダイソーのみです。
使い方は、二つ折り、三つ折りにしたり、接地面の幅、大きさを変えたりします。細くしたり、太くしたり。工夫次第で様々な表現ができますよ。
パステルの透明度維持とカット綿の使い方
ー パステルをすりおろしてからだと、画用紙にカット綿をつけた時に、色がダマになってしまい、強く付き過ぎてしまいます。どうしても色がのびていきません。そして、いじっているうちに、色が混じり合って、透明度が落ちてきます。カット綿には、どれぐらい擦り付けていますか?
色をたくさん重ねると、濁る。
これは、経験としてしっかり記憶できたと思います。
では、どうすれば?ですね。
基本的には、反対色を混ぜれば濁ります。
それとは別に、いくつかの色を混ぜ合わせることで透明感は薄れていくのが通常です。
パステルは、粉状、です。粘度はなく、紙面から落ちやすい性質があります。
これを紙面に載せるわけですが、そのために、「こすりつけ」ます。
こすりつける方法で、いくつも重ねることは、さらに力がいることです。
で、この方法はとらないことにします。(限度もご理解いただけたと思います)
こすることでの限界が、感覚的に理解できると、
濁りを抑えた色数で描くことが可能となります。
ある程度、こすることを行った後は、
例えるなら、パッティング、という感じで進めてきましょう。
パステルは、 ダマにならないように細かく削りだします。
カッターをパステルに対し垂直に立てた状態で軽くこするとかなり細かくなりますよ。一般的には、茶こしなど使ったりしていますが、カッターを使うこの方法だとかなり細かい粒子で削り出すことができます。
パステルをコットンにつけて(コットンの接触面を大きく、小さくして)トン、トン、トンと丁寧に粉を置く感じ。そして、軽く定着液をスプレー。
色を変えるなど、パッティング→定着液を繰り返すことで色が濁ることなく深みが出てきます。
透明感を残すポイントとすると
確実に濃い色が決まっていないのなら、
まず、”薄い色を乗せることを一番”とし、
段々と濃い色を乗せるようにしていきます。
一気に濃い色を乗せることは、変更がない場合、確定している場合に限るようにします。
もう一つは、消すという作業で、
パステルをある程度重ねた後、消しゴムで消した場合、
すべて消えず、少し残ることで、微妙な色が生まれてくることがあります。この方法は、思いもよらぬ色合いが出てくるので、わたしは多用しています。
ただし、濃い色を一旦乗せてしまうと、消すことで薄くはなりますが、
更に別の色を乗せたときには、濁りを感じてしまうと思います。
様々な色を使って試してくださいね。
直感がメインなのですが、進めるにしたがって、知識と経験が必ず必要になってきます。経験から得られたことを知識として応用することで、
感覚と知識(思考)を適宜切り替えながら描くことで、より精妙な表現が可能となります。
紙質と表現の違い
ー ホルベインのパステルを使われる際、紙はどのようなものを選ばれるでのしょうか。
ー 最初に筆ペンで線を描き、後からパステルで薄い色を乗せていこうと思ったのですが上手くいきません。
ー ホルベインのパステルを使うとき、何か工夫をされていることがありましたらお教えください。
わたしがホルベインパステルについて特に気を使っていることは、
発色と乗りの良さだけですね。
パステルを使うときの紙は、画用紙だけを使っています。
私が表現する方法では最も適しています。
紙質は、様々なものがあるので、いろいろ使ってみて自分に合うものを探すのも楽しいものですよ。
多分なのですが、筆ペンの特性に馴染まれていないという気がします。
画材それぞれに特徴があります。
こうしたいと思っても、その特性から相容れないものはあります。
例えば、筆ペンで描くと明確で強いエネルギーとしての載りがあります。
パステルは、優しさ。濃くしても優しさは残ります。
両方を共存させるには、融合点を見つける必要があります。
表現としてのエネルギーの調和を取ることが大切になります。
例えばですけど、筆で描いた部分は主題として触らず、
筆の強い感じを引き立てるように背景としてのパステル使いをするのも良いでしょう。境界を繋ぐのには、色鉛筆を使ってみるのも良いでしょう。
この辺の感覚は、講座の終盤で行っていただいているのですが、
さすがです。すでにそのことを理解しようとされているのですね。
違う画材を、共存させるには、どのような工夫が必要か?
描いて、いろいろ試すことで、感覚的に表現できるようになると思います。
基本は、画材によって、エネルギー表現の強さ、優しさなど表現としての質が少しずつ違うと理解しておきましょう。
透明感がなくなっていく
ー 動画を拝見しながら色を塗り重ねていきましたが、薔薇にどんどん透明感がなくなってしまいました、どうしたら美しく色を保てるのでしょう?
色の順番は、まず薄い色、薄い黄色とか薄い水色などを先に塗ることが大切です。
そして段々と濃くしていくイメージで重ねていきます。
パステルの乗せ方は、こすることをメインにすると、重ね続けることで濁りが生まれやすくなります。こすりつけて重ねているとやがて、それ以上は、色がのらなくなってしまします。
パッティングでパステルを重ねると濃くなっていきます。この時必要に応じて、定着液で定着させていきます。
こする、パッティング、その中間を上手く使えると色の濁りは回避できると思いますよ。
もう一つ、ハイライト、という表現があります。
これは、光が強く当たっている部分を白くすることで、形の立体感、メリハリが出やすくなる方法です。薔薇のエッジ(花びら)にハイライトを加えることで立体感が出やすくなります。